純朴な若者が村で一番可愛いけれどいじっぱりな娘に恋をして、怪しい旅の薬売りが売った偽の「愛の妙薬」のおかげ(?)でハッピーエンドを迎えるという楽しいお話
第一幕
スペイン、バスク地方のとある小さな村。今日も今日とて純朴な若者のネモリーノは、かねてから片思いしている村一番の器量良しで賢いアディーナを『なんて綺麗なんだろう』と見つめている。アディーナは(なんと言ったって文字が読めてしまうくらい賢いのだ)休憩中の村人達にせがまれるまま「トリスタンとイゾルデ」の物語を読み聞かせ「お話に出てくるような立ち所に恋に落ちてしまうような魔法の薬があったらいいわね」と笑っていると、太鼓の音と共に移動中の小隊が登場する。
隊長のベルコーレ軍曹が目ざとく、村娘達の中で一番可愛らしいアデイーナに花束を差し出して『昔、パリスがしたように』と求婚し、その都会的な態度にアディーナもまんざらではない様子を見せる。
ぐずぐずしているネモリーノにアディーナは冷たく「町の叔父さんのお見舞いに行かないと遺産がもらえなくなっちゃうわよ」と追い払う。
トランペットの音と共に登場した「偉大な博士」と自ら名乗る巡回薬売りドゥルカマーラの口上に、信じやすい村人たちはホイホイ騙されて次々と怪しげな薬を買わされる。おまけにネモリーノは物語に出てくる「愛の妙薬」は持っているか聞く始末。もちろん博士ならぬ実際のところインチキ薬売りのドゥルカマーラは、その場で安酒をボトルに詰めて「娘達がすぐに恋に落ちてしまう魔法の薬」だと言ってネモリーノの有り金全部を巻き上げる。当然、自分は明日には逃げてしまうつもりなので「その薬のことは誰にも言わない。効果は明日になったら出る。」ことをしつこく言い聞かせる。
明日になればアディーナは自分のものだ!とネモリーノが良い気になっていることに腹を立てたアディーナは、今日中に結婚しようというベルコーレの求婚を受けてしまう。
第二幕
アディーナとベルコーレの結婚の祝いの席。ちゃっかりドゥルカマーラも隣席しており、お祝いに花嫁と二重唱『わしは金持ち そなたは美人』で宴席を盛り上げる。公証人がやって来るがネモリーノがいないのでアディーナは気が気ではない。
一方ネモリーノは公証人まで来ていることに絶望し、今日中に愛の妙薬の効果を出させる為にもう一本薬を贖おうとするが、手持ちの金を使い果たしてしまったので、折り良く現れたベルコーレに誘われるまま軍への入隊の契約をして支度金を受け取り、薬を手にいれて一気に飲む。
安酒を飲んで良い気分になっているところへ、町の叔父さんが莫大な遺産を残して亡くなったという噂を聞きつけた村の娘たちが「これこそ玉の輿のチャンス!」とばかりにネモリーノに群がり、ネモリーノは愛の妙薬の力だと勘違いをする。
アディーナはドゥルカマーラからネモリーノの身売りを聞き、その深い愛情に感動し自分がどれほど酷いことをしたのかを悟る。ネモリーノはアディーナの涙を見て『人知れぬ涙』自分への彼女の愛を確信する。
アディーナがベルコーレから買い戻した彼の入隊契約書をネモリーノに渡し立ち去ろうとすると、愛されないくらいなら戦いに出て死んだ方がマシだと絶望するネモリーノに対してようやく愛を告げる。
全員が舞台にもどり、ドゥルカマーラがこの全ての幸運はみな自分の「愛の妙薬」の薬効によるものだと胸をはり、皆が競って薬を買い求め、ドゥルカマーラは晴々と村を去ってゆく。
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最盛期のルチアーノ・パヴァロッティとキャスリーン・バトルを迎え、脇をホアン・ポンス、エンツォ・ダーラといった名役者を揃えた、メトロポリタンオペラらしい豪華な舞台。ちょっとスペインバスク地方感は少ないけれど入門編としてはわかりやすく奇を衒った所のないオーソドックスな演出です。