【Bohème:Vol.7】ペントハウス貸します

「ペントハウス」っていうととても豪華で素敵な響きがありますね。まあ、平たく言って、屋根裏部屋のことなんですが、それでもこの言葉には、赤毛のアンではないけれど、ちょっとばかりの憧れを持ってしまうのですが……
ヨーロッパでは、あまりロマンチックなばかりのものではないようです。

夏暑く、冬寒い。おまけに雨漏りの温床。それは気温を遮ってくれる上階の部屋がないからです。というより、住居スペースにとって屋根裏が緩衝剤。イタリアでは、最上階には「solaio」と呼ばれる屋根裏物置のフロアが作られ、屋根裏部屋がない建物もけっこうあります。そして、たとえ建物にエレベーターが付いていようと(機械室が有るためですが)最上階だけにはエレベーターが行きません。
つまり「屋根裏部屋」であろうと「屋根裏物置」であろうと、最後のワンフロアだけはがんばって階段を登らなければならないことが多いようです。もちろん、ボエームの時代は最初から階段しかありませんから、けっこう大変ですね。

ミミとロドルフォの屋根裏部屋

ボエームの中で、ミミとロドルフォが住んでいた「屋根裏部屋」は「Soffitta」です。このことについては、後で書いておきましょう。それよりも、ミミが苦しそうにしているようです。そちらを観てみましょう。

ロドルフォは、相も変わらず屋根裏部屋に住んでいます。建物が何階建てかは明記されていませんが、当時のパリだとすると、どう考えても2階建てや3階建てではなさそうです。4幕で、駆け込んできたムゼッタがぜいぜいするのも当然だけれど、死にそうなミミがそこまで良く登ってきたなあと思います。

愛って強い ♡  いや、違うだろう…

ところで、ミミは東側、ロドルフォは西側の部屋、という事を前回書きました。それはリブレットの言葉からの想像です。
ミミが東の窓、というのはとっても判りやすいですよね。 

雪解けと、最初の太陽が私のもの、4月の最初の接吻が私のものなのです

Puccini : La Bohème “Mi chiamano Mimi(私はミミと呼ばれているの)”

ということは彼女の部屋は、きっと誰よりも東側にあるのでしょう。 歌詞を見ていると、なんとなく他より背の高い建物のような気もしますね。階段登ること考えるとああ大変。

ロドルフォは西側の部屋❤️
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【Bohème:Vol.6】ハートに灯をつけて ご存知、ボエームの第一幕。ミミとロドルフォの出会いのシーンは蠟燭の火がきっかけになりますね。蠟燭って暗いんですよ…………

一方、ロドルフォの部屋は、終幕で、ミミがひっそりと息を引き取った時のこと。“ロドルフォは彼女の顔に陽が当たるのを遮ろうとする”と「ト書き」にあります。おお!時間はいつでしょう?

ミミは、寝台から皆に“Buon giorno, Marcello,Schaunard,Colline…(おはよう、マルチェッロ、ショナール、コッリーネ)と声をかけています。「Buona sera」ではなく。

「Buon girono」はお昼休み頃まで、お昼ゆっくり休んで戻ってくるともう「Buona sera」です。13時頃から15時前までは、基本お休み中なのでさて‥う〜ん、どっちでしょう。

ミミがロドルフォの部屋へ現れたのは午前中、午後1時かどんなに遅くても2時ころ(フランス人設定なのでそこらへんは違うかもしれないけれど、台本書いているのがイタリア人ですから)でしょうか?オペラではあっという間(20分くらい)のお話ですが、実際はもうちょっと一緒にいさせてあげましょうか、ミミが眠ってしまったり、コッリーネがコートを売りに行ったり、ムゼッタがイヤリングを売って医者を呼んできたり……なにやらかにやら 2〜3時間はかかるでしょう。

季節はやはり春先なんでしょうか?彼らが別れて3~4ヶ月とあります。春になったら別れましょうとミミとロドルフォは言っていたのですが、どうもその前に別れちゃったのでしょうか……
長くなりそうなので、これはまた、別のお話にしましょうか。
ちょっと昼が長くなって寝台のミミの顔に夕陽が当たる。…となると ロドルフォの窓は南西から西向きになるのかな、と思ったからです。また、ロドルフォは1幕で外に出た皆に声を掛けられて、窓から返事を返しています。ということはロドルフォの部屋は道路に面しているのでしょう。

現代の「屋根裏部屋」事情

フランスについては存じ上げないので違うかもしれませんが、現代のイタリアにおける屋根裏部屋について、ちょっとだけ書いておこうかと思います。
イタリア語には『屋根裏』に当てはまる単語が多いですね。

Attico(ペントハウス)/Mansarda(2段式寄棟屋根裏)/Soffitta(天井裏)/Solaio(屋根裏)

イタリア語辞書

単語が多いということは、文化として その言葉を細かく分類するほど、「その概念にその人々が執着しているから」だそうです。「日本語には自然を表す言葉や品物の数を数える数詞がやたら多いくせに、数字は思いっきり単純。身体についての単語ももの凄く少ない」ということを、金田一春彦先生が仰っていました。

つまり、イタリア人にとって屋根裏ってすっごく重要だったんでしょうね。イタリアの不動産情報雑誌を読むのってけっこう好きなんですが、最近では不動産用語としては、ボエームで使われていた「Soffitta」という言葉はあまり使わてはいないようです。不動産サイトなどをみると、もうちょっと高級な「Attico」「Mansardaが使われています。そうです。ペントハウスです!

  • Soffittaというと、現代では物置に使うイメージが強いです。不動産用語なども、時代によって色々と流行があるのか、もしくは現代の人たちはそれなりにお金持ちになったので、本当に屋根と部屋の間の隙間を居住スペースとしては使わなくなっているためだではないかと思います。
    とはいえ、本当の屋根裏にあたるSolaioは、壁もちゃんとしていなく、隙間風吹き荒ぶ素敵な空間になりますので、そこよりはちゃんとしているんでしょうね。
  • Mansardaは2段式寄棟屋根裏(意味わかんないですよね)とあるように、感覚としてはロフトのようなものです。たとえは、個人宅の一部、ロフト部分を間貸しするということなどもありますし、切り離して別部屋にすることもあるようです。

ちゃんとエレベーターもそのフロアまで行き、広いルーフバルコニーも奇麗に整備され、とても快適そうなものもあります。もちろん、中には昔ながらの屋根裏部屋もちゃんとAtticoの賃貸情報として出ています。お値段も1/10程度になりますので、すぐにわかります。

試しに、イタリアのWebサイトでちょっと調べてみませんか?「ペントハウス貸します!」という案内が出てきます。

イタリアの不動産サイト
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読み込み中... Vendita case, appartamenti, uffici e negozi: migliaia di ann.... イタリアの不動産検索サイトです。お好きな都市を選んで、Affita で、Atticoを選べば、現在の屋根裏部屋の賃貸物件を探すことができます。

まず、地域を選びます。地域はお好きなところでどうぞ。 
Regione:州です。 ロンバルディア州 ヴェネト州etc…
Provincia:県です。ミラノ県 ローマ県、ヴェネツィア県etc…
Comune:市です。ミラノ市やセスト・サン・ジョヴァンニ市 ローマ市 メストレ市etc…

ご予算です。
Prezzo (€)da :  a :1000 1000ユーロ以下 (最近すごく上がっていますので、1000以下は見つからないかもしれませんが)
高級なところをご覧になりたい時は ご予算は上限なしでどうぞ。
お部屋のタイプ
Tipologia:Attico/Mansarda 屋根裏部屋 こちらを選択したら、赤いCercaのボタンをクリック

2024年4月、この文章を書いている時にフィレンツェで調べたところ、500ユーロの屋根裏部屋が一つ見つかりました。35m2、1DK、お風呂付きで、3階建ての3階部分。おや、ここは随分と楽そうですね。
また写真を見てみると、おそらくミミたちが住んだ部屋もこのような感じかなと思わせるものがあります。

いかがでしょうか? あなたもイタリアでペントハウスの住人になってみませんか?

ラヴィ・ド・ボエーム (字幕版)

【なんだかもうやるせない】アキ・カウリスマキ監督の手による、「ラ・ボエーム」の原作小説の映画化のビデオです。ロドルフォ、マルセル、ジョナールの3人の前にミミが現れ…… モノクロの世界がとても切ない。
こちらはAmazonでのレンタル、WowWowなどの選択肢があり、400円からご覧いただけます。