ヨハン・シュトラウスIIの名作「こうもり」と言えば、1870年頃のウィーンが舞台。大晦日のバカ騒ぎ…
実は原作では「パリ」の「クリスマスの夜」なんです。その原作って「Réveillon(イヴのどんちゃん騒ぎ)」アンリ・メイヤックとリュドヴィック・アレヴィによって「パリを舞台に」フランスで「戯曲として」出され成功しています。(実は、この原作本には、プロイセンが舞台となっているネタのお話があるようなんですが、エッセンスが全く違うのでここでは黙殺しますね)
1870年頃のパリが舞台、ということは、登場人物たちの設定にとっても大きな意味があります。
フランス革命から始まる、度重なる政治崩壊と再生の結果の「貴族階級の崩壊」「ブルジョワの隆盛」がここらへんで関わっていますね。アイゼンシュタインは貴族ではありません。モーツァルトの時代でしたら、こういう浮気な夫は貴族や領主です。銀行家ではなかったはずです。そして、平民である銀行家が外国の、とはいえ、王族につながる大貴族のパーティーに出席しているというのですから、ちょっと前ならありえなかったお話。そして、教会を否定した革命を経たパリでは、クリスマスそのものの存在が変わってしまっています。
ただ、オペレッタとして作曲されたのは、もちろんパリではありません。革命を経ていない上に、なにせマリア・テレジア様の遺訓だだしく、けっこうお堅い性格のオーストリアのことです。
おまけに劇場から歩いて30分もかからないところには、かのザンクト・シュテファン大聖堂が。非信者には単なるでっかくて黒い教会ですけれど、司教座聖堂、つまりカトリックの大司教の御座所におわします。クリスマスにこんなチャラチャラした事は許されません。(当然ですね。)
ってことで、別にクリスマスじゃなきゃありえな〜い!と言う程の事もありませんので、年末のどんちゃん騒ぎになった次第のようです。
J.シュトラウス 喜歌劇《こうもり》全曲[DVD]
【こうもり見るなら絶対この版】最高の美声の主、プライが酔っ払ったいきおいみたいなノリノリアイゼンシュタインを演じれば、テ・カナワが多言語で切り返す、ドミンゴが楽しそうに指揮をすれば、アズナヴールがゲストとして出演。 とにかく贅沢ざんまい。ひたすら楽しめる一枚です。
出演>ロザリンデ:キリ・テ・カナワ/ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ヘルマン・プライ/夜会のゲスト(第2幕):シャルル・アズナヴール(シャンソン歌手) メール・パーク (英国ロイヤル・バレエ)ウェイン・イーグリング(英国ロイヤル・バレエ)他
指揮:プラシド・ドミンゴ/演奏:コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
Réveillon
【フランス語が得意な方はぜひ!!】流石に日本語翻訳は出ていませんでした。とはいえ、ボエームもずっと原作の翻訳が出ていなかったので(需要が‥)ある日翻訳されて出てくるかも???
フランス語ペーパーバック版の「イヴのどんちゃん騒ぎ」です。当然、私は読めませんので諦めました‥ お読みになった方、ぜひ詳細な感想をいただけると嬉しいです。