ラ・ボエームの解説本を読むと、舞台はたいてい、1830年頃のパリ、時はクリスマス・イブと書いてあります。
まあ、せいぜいが1830年代中頃まで。 つまり1830年から1835年頃と見るのがよさそうです。
お話は文無しの若者たちと、貧しいけれど心根の優しい娘たちの一瞬のきらめくような愛と死を描いたとてもロマンチックなお話ですけれど、この当時のフランスって、実のところ、とんでもないことになっているんです。ここんところは押さえておきましょうか。
1789年、フランス革命ですべてがガラガラポン!王政が廃止され共和制へ。高い理想を持って突っ走りすぎたせいで内部では自己崩壊してしまいます。
ところがあまりに過激な革命の進み方にびびった諸外国から、介入にあってしまいます。現在もどこかの国がなんかあると介入しますよね。さすがにこれには困った。
それを打ち破れるには強い軍人が必要だったのです。いいところに出てきたのがナポレオン。その帝政の時代を経て、やっぱり成り上がりは「ダメ」と王政復古がなされます(忙しいですね)。
ルイ16世の弟のルイ18世の時はまあなんとかいったんですが、その弟、シャルル10世のとった反動政策に叛旗を翻したのは力をつけてきたブルジョワジ(中産階級)たち。
7月革命で国王を追い出し、オルレアン家のルイ・フィリップによる新国王が誕生します。
おお、そういえば、ルイ・フィリップさんって、1幕でショナールが投げたコインに刻印された国王陛下でしたよね。
その結果、爵位が裕福な市民階級に買われて「成り上がり貴族」が誕生する一方で一般大衆の多くは職を失い、町は失業者で溢れていました。
一方、レ・ミゼラブルのクライマックスの学生たちの蜂起のシーンは1832年6月のパリ蜂起(暴動)が舞台です。
それは経済国王といわれたルイ・フィリップの下、広がる貧富の格差と不作、コレラによる街の荒廃が背景となり、やり場を失った若い理想主義者たちの暴発でした。気の毒に……
そしてその失敗により、民衆の不満は1848年の2月革命によって国王が追い出されるまでどんどん肥大し悪化していったのです。
ということで、まあ、ロマンチックどころでないのがこの時代です。
ロドルフォもミミを口説いている暇なんかない状態のはずですが、良くしたものでこういう時代ならではの物語が産まれたのですね。
あとから重要になってきますからしっかり押さえておきたいポイントです。私だったらきっと試験に出しますよ。
プッチーニ 歌劇《ラ・ボエーム》
【贅沢版ですが】若きパヴァロッティとレナータ・スコットの絶品ボエームです。レヴァイン&メトという最高に華やかな時代の舞台。よくぞ再販されたものという版です。
スコット(レナータ), ヴィクセル(イングヴァル), メトロポリタン歌劇場管弦楽団, メトロポリタン歌劇場管弦楽団,合唱団, レヴァイン(ジェイムズ), プリシュカ(ポール), パヴァロッティ(ルチアーノ), メトロポリタン歌劇場合唱団
PUCCINI : LA BOHEME DVD
【もう手に入らないですが】こんなすごい版を見つけてしまいました。
絶版になってしまいましたが、もしかしたら中古が出る場合もあるのでリンクは残しておきます。
カルロス・クライバー指揮/イレアナ・コトルバシュ(ミミ)/ルチアーノ・パヴァロッティ(ロドルフォ)/ルチア・ポップ(ムゼッタ)
ゼッフィレッリの演出。垂涎の的です。映像も音もあまり良くないのですが、それを押しても‥