Category Archives: オペラ無駄話

知っていても誰にも褒められないし世の中に何の役にも立たない、オペラのトリヴィア集

【Boheme:Vol.3】ボヘミアンな名前物語

少女 ミニヨン
Photo by cottonbro

「私、皆に『ミミ』って呼ばれていますの。 「でもね、本当の名前はルチアって言うの。」
「何故ですって? 知らないわ。」

オペラをお好きな方たちにはあまりにも有名なアリアですね。
ルチアがどうしてミミ?? と思った方もいらっしゃるのではありませんか?

ミミとは「mignonne(ミニヨンヌ)」の省略形です。
あら、「君よ知るや南の国」かのゲーテのミニヨンと同じですね。
「おちびちゃん」とか、「可愛い子ちゃん」というようなニュアンスの呼び名で、日本なら「ポチ」とか「チビ」って、子犬につけたりしますよね。そんな感じでしょうか。小柄で可愛い女の子のイメージですね。

ムゼッタもどうやら本名ではなさそうですよ。
フランス語ではミュゼット「musette」となります。
ミュゼットって、フランスの民族楽器でバグパイプみたいなものがあります。つまりバグパイプ娘さん。
私が昔聞いた時は、ピーピー煩い娘だから、という、2幕のシーンを基準に名付けられたって言われたのですけれど
もうひとつ、その楽器のための音楽やダンスも意味するそうです。主に三拍子で、牧歌的な、ちょっぴり田舎っくさいワルツ、といったところのようです。
ムゼッタって、やっぱりワルツなんですね。女性陣は皆さん本名ではなく、通り名だった訳です。 ここにもちょっと秘密がありますけれど、それはまた別の時に。

ところで、名前といえば、ボエームの主役達、つまりボヘミアン生活をする若者達—ロドルフォ、ショナール、マルチェッロ、コッリーネ… こちらもちょっと面白い組み合わせです。ロドルフォとマルチェッロは、すぐにわかりますね。
フランス語ではルドルフとマルセル。あきらかにファーストネームです。「ルドルフ」はええ、もちろんサンタクロースのトナカイ…じゃなくて 高地ドイツ語の名前「勇猛な狼」を意味する英雄や皇帝の名前です。マルセルはもちろん「軍神マルス」が語源といわれています。 ふたりともすごい名前ですね。

ところで、残りのふたり、コッリーネとショナール。こちらは、ファーストネームではありません。姓の方です。まあ、日本でも友達同士でファーストネームで呼ばれる人と苗字で呼ばれる人がいますよね。 その感じでしょうけれど、
ちょっとファーストネーム、知りたくありませんか?

まず、コッリーネ(コルリーネとコッリーネのちょうど中間の発音です。コ「ッ」っていってる間にちいさく「ル』と言います。難しいですね。)名前はリブレットにありました。
リブレットは、スタンフォード大学のライブラリーで見つかります。

その第二幕の最初に
「グスターヴォ・コッリーネ、偉大な哲学者……」 とあります。
なんと!こちらもまるで王族のような名前ですね。
つづいて「画伯マルチェッロ、大詩人ロドルフォ、大音楽家ショナール…… 彼らは互いにそう呼んでいた–」とちょっとシニカルな書き方をしています。

そうでした。もうひとり、名字の人が居ました。
そう、ショナールです。彼もファーストネーム、ありますよ。
コッリーネのグスターヴォもけっこうびっくりなんですが、ショナールが、なななんと、

アレクサンドル・ショナール……

イタリア語だと、アレッサンドロですね。意味はギリシャ語の「男達を庇護する者」戦士の守護者ヘラの称号でもあったようです。実際に、モデルはミュルジェの友人、アレクサンドル・シャンヌだそうでいい加減につけた名前ではないんですが、アレクサンダー大王の名前を頂いています。

4人とも素晴らしく立派な名前を持っていたのですね。

若者たちは、すべからく勝利者の名前を持ち、娘たちがふたりとも通り名を使っている。これがボエームのひとつの秘密になっています。

【がっつり読み込むととても面白い】

名作オペラブックス(6)プッチーニ ボエーム
2005年に発売された、オペラファンにとってはめちゃくちゃ有能なサポートブック。
現在は さすがに絶版となってしまったので、図書館か古本で探すしかありません。
それでも リブレット(まあ、改訂版が出ちゃっているものも多いんですが)やト書き、当時の裏話など、とても興味深いネタはたくさん掲載されている本です。どこかで見かけたらぜひ手にとってみてください。

【Traviata:Vol.1】ドゥミ・モンドのこと

今回はドゥミ・モンドのことについてちょっと書いてみましょう。
この話を書いておかないと先にいろいろと進めなくなってしまうのです。


ドゥミ(半分)モンド(世界)
フランス語で「半分の世界」という意味になる言葉ですが、実はけっこう新しい言葉なんです。それも 誰あろう、アレクサンドル・デュマ・フィス(息子)が、1855年に発行した小説のタイトルとして創った言葉とのことです。ってことは、その頃、実際にはそう呼ばれてはいなかったっていうことですよね。また、わざわざそういう言葉を作った、ということは 今までの社交界とは違うものがそこに確実に存在した、ということになるのだと思います。

では、半社交界、ドゥミ・モンドとは一体何だったのでしょう?

日本語だと 半というより、裏社交界と言った方が判りやすいかもしれないですね。

1830年の七月王政から48年の王制崩壊、共和制になるちょい前の15〜6年くらいの間、その前に興った産業革命ともあいまって、フランスは前代未聞のバブル(土地バブルではなく、投資バブルですね)に浮かれまくります。こうなると、なにが興るか!?

極端な貧富の差の誕生です。

日本のバブルはあっという間にしぼんじゃったので、そりゃあ大変だったけど、それでも案外傷は浅かったのですが、このバブルは15年もつづいたのです。
けっこう大きな傷跡残してくれました。

突然の貨幣経済により、土地からの収益のみで成り立っていた貴族達は没落し、突然大量の資産を手に入れた裕福な市民階級がその称号を買い取り、新興貴族となります。
その彼らの周りにいたのは、時代の徒花として存在した特殊な女性、お待たせ致しました!「クルティザンヌ」たちですね。
高級娼婦とも呼ばれますが、美貌だけでなく、高い教養やそのセンスの良さを誇り、誰かの愛人として囲われることなく何人ものパトロンを持ち、湯水のようにお金を使います。
ええ、自分で苦労して稼いだお金ではありません。他人のあぶく銭ですから、もう親の敵のように派手に使いまくりました。
パリの中心にアパルトマンと自分用の馬車を持ち、自ら月に数回も華やかな舞踏会を主宰し、劇場に通います。まあ、羨ましい(<違)

中でも野心的なクルティザンヌのうちには、財産を築いたり店を持ったりして生き抜いた人も居ますが、共和制以降は気の毒な事になったようです。
当時の人気クルティザンヌの写真は、ブロマイドとしてかなり売れたようです。ってことは一般庶民の憧れ、今ならさしずめレディ・ガガ様や浜崎あゆみの様な大スターでしょうか。

そういった、クルティザンヌや、新興貴族、ブルジョワジー達によって構成された社交界のことを、王族、貴族による本来の意味での「社交界」に対して、ドゥミ・モンドと名付けました。

ヴィオレッタのパーティに集う人々をご覧くださいまし。
本来の重要な貴族達(まあ、かなり革命で消えちゃいましたせいか)公爵や伯爵はあまり見かけません。
男爵や子爵といった、割と爵位の低い貴族が揃っていますが、皆さん羽振りはよろしそうですね。
このうち、特に家臣から発生した「男爵」という爵位は、簡単に金銭による売り買いの対象になりましたから、ドゥフォール男爵って、ちょっと新興の成り上がり貴族のようにも思えます。
ああ、貴族の「階級」のお話も面白いのでいずれまた。

ところで、ヨーロッパでは「ちゃんとした女性」が、パーティの席でお酌をすることはあり得ないんだそうです。
あくまでもそのための僕か、それが居ないときは主人役の男性が行います。
一幕で『ヘーベーを見習ってお酒を注ぎましょう』とヴィオレッタがお酒をついで廻りますが、こういうことをやっちゃうのが、女主人が「普通の夫人」ではないドゥミ・モンドのパーティ。
そこに居るのは、貴族の皮をかぶった平民、貴婦人のドレスをまとった、やっぱり娼婦達。ちょっとぞくぞくしませんか?

当然、趣味の良さを身上としますので、豪華さも華やかさもうわべの上品さも貴族のそれとは全く見劣りがしないはずです。
ただ、どうしても長い年月をもって培われた貴族達とはどこか違う、何故かちぐはぐでいびつな世界。これがドゥミ・モンドです。

【お酒注ぐシーンが印象的。美しいヴィオレッタが素敵!】

DVD ヴェルディ:歌劇「椿姫」日本版が廃盤になっていて残念です。 字幕はないけれど一見の価値はあります。
アンジェラ・ゲオルギューの出世作。 とにかく美しかったです。
サー・ゲオルク・ショルティの指揮のもと、正確無比な音程で見事に情感を描き切った素晴らしい若く気高く美しいヴィオレッタでした。

【とにかく演出が美しすぎる。まさにドゥミモンド】

こちらも日本版が廃盤になっていて残念…
ゼッフィレッリのあまりにも有名になってしまったトラヴィアータ。
美しいことこの上ない映像と、このために多大なダイエットをした結果、ナイーヴで繊細な美青年となったドミンゴが思う存分夢をみさせてくれます。

【こうもり:プロローグ】De Noël à Paris♪

ヨハン・シュトラウスIIの名作「こうもり」と言えば、1870年頃のウィーンが舞台。大晦日のバカ騒ぎ…

実は原作では「パリ」「クリスマスの夜」なんです。その原作って「Réveillon(イヴのどんちゃん騒ぎ)」アンリ・メイヤックとリュドヴィック・アレヴィによって「パリを舞台に」フランスで「戯曲として」出され成功しています。(実は、この原作本には、プロイセンが舞台となっているネタのお話があるようなんですが、エッセンスが全く違うのでここでは黙殺しますね)

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Photo by Craig Adderley

1870年頃のパリが舞台、ということは、登場人物たちの設定にとっても大きな意味があります。

フランス革命から始まる、度重なる政治崩壊と再生の結果の「貴族階級の崩壊」「ブルジョワの隆盛」がここらへんで関わっていますね。アイゼンシュタインは貴族ではありません。モーツァルトの時代でしたら、こういう浮気な夫は貴族や領主です。銀行家ではなかったはずです。そして、平民である銀行家が外国の、とはいえ、王族につながる大貴族のパーティーに出席しているというのですから、ちょっと前ならありえなかったお話。そして、教会を否定した革命を経たパリでは、クリスマスそのものの存在が変わってしまっています。

ただ、オペレッタとして作曲されたのは、もちろんパリではありません。革命を経ていない上に、なにせマリア・テレジア様の遺訓だだしく、けっこうお堅い性格のオーストリアのことです。
おまけに劇場から歩いて30分もかからないところには、かのザンクト・シュテファン大聖堂が。非信者には単なるでっかくて黒い教会ですけれど、司教座聖堂、つまりカトリックの大司教の御座所におわします。クリスマスにこんなチャラチャラした事は許されません。(当然ですね。)

ってことで、別にクリスマスじゃなきゃありえな〜い!と言う程の事もありませんので、年末のどんちゃん騒ぎになった次第のようです。

【こうもり見るなら絶対この版】最高の美声の主、プライが 酔っ払ったいきおいみたいなノリノリアイゼンシュタインを演じれば、テ・カナワが多言語で切り返す、ドミンゴが楽しそうに指揮をすれば アズナヴールがゲストとして出演。 とにかく贅沢ざんまい。ひたすら楽しめる一枚です。

J.シュトラウス 喜歌劇《こうもり》全曲 DVD
出演>ロザリンデ:キリ・テ・カナワ/ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン:ヘルマン・プライ/夜会のゲスト(第2幕):シャルル・アズナヴール(シャンソン歌手) メール・パーク (英国ロイヤル・バレエ)ウェイン・イーグリング(英国ロイヤル・バレエ)他
指揮:プラシド・ドミンゴ/演奏:コヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

【Boheme:Vol.2】カフェ・モミュスに行こう!

Cafe de Paris
Photo by Daria Shevtsova

舞台になった、カフェ・モミュスなんですが、実はThomas Boysという画家がスケッチを残しています。
ケンブリッジ・オペラ・ハンドブックの表紙にスケッチの一部が使われているので、記憶にある方もいらっしゃるかもしれないですね。
画像検索でしっかり見つかりました。

壁にちゃんと「カフェ・モミュス」とあります。ビリヤードっていう文字もみえます。

こちらの絵は複製画を14.9ユーロから(税込み)で購入できるようです。よろしければおひとつ……

う~ん。 実在したのですねえ……だけど、なんだかちょっとイメージは違う雰囲気はします。
場所はどこでしょう。水彩画の方の説明には、Rue des Prêtes, Paris とあります。多分、これは住所でしょう。

地図を広げて調べると、その通りの名そのものは既に見つからず、3 Rue des Prêtes Saint-Severinと言うところにサンセヴラン教会があります。カルチェラタンの近く、サンジェルマン通りのすぐ北、イル・ド・フランスといわれる地域です。

ちょっと微妙だなあ…… と思いつつ、ト書きを読んで行くと、色々と通りの名前が出てきますね。

市民達が「Via Mazzarinoに行こう!さあ、Cafe Momusへ行こう!」と言います。(ヴォーカルスコア98ページ)
パリの場合、Rue Mazarine(マザリーヌ通り)でしょうか。
地図を広げてみると、ああ、ありました!マザリーヌ通りにムゼッタが立つ(116ページト書き)と、ドフィーヌ通り(106ページ)との交差点を挟んだその向うの旧コメディ通りにパルピニョールが去ってゆきます(110ページ)。
そのちょうど5つの通りがちょっと変則的に交差する角には まさにこんな感じ!というカフェが両側にあります。
Le Buci とLe Conti…… あ、ちょっと惜しい!モミュスじゃないっ!!(笑;;;;

それでもその辺りはまさに カフェ・モミュスのイメージにぴったりですね。
実は、別のルートから、モミュスのあった場所が判りました


17 Rue des Prêtres-Saint-Germain-l’Auxerrois だそうです。

関係者の家やモミュスの場所を入れたGoogleMapを作って、公開しておきましたので、興味のある方はどうぞ。まあ、リアルに場所がわかったからってどうってことはないですが(笑;;;
だけど、これで見ると、モミュスって、ポン・ヌフを超えて、対岸にあるんですね。

ところで、オペラの中に登場するカフェ・モミュスのモデルには、もう一つ、プッチーニが当時滞在していたトリノのテアトロ・レージョ近くにある カフェ・ビチェリン(Al Bicerin)がそうじゃないかという説もあります。
創業が1763年とのこと、少なくとも初演を前に準備が忙しかったプッチーニが通っていた事は想像に難くないでしょう。

–イタリア人ですもの、3歩歩いたらバール寄りますからね。(^m^)–

ひょっとして、音楽のイメージの中に このカフェが反映されているかもしれないですね。

ところで、ここでクイズをひとつ。

実在の4人の若者達(当時「四銃士」と呼ばれていたそうですよ)をモデルにした、ロドルフォたち4人。カフェ・モミュスへは、このクリスマスの晩に「A:実は初めて行った」いえいえ、「B:何度も行った事がある」

さてどっちでしょう。

応えは「B:何度も行った事がある」です。

え? だってボーイが持ってきた会計書見て「高っ!!!」って叫んでいましたよね。自分たちの懐具合も値段もわからないでモミュスに繰り出していったって??

そうなんです。そこんところについてもリブレットにはちゃんと書いてあるんです。
「彼らは、何度もモミュスに出かけ、請求書を受けても払う事もなく出てくるところも一緒で……」
のどかな時代なんでしょうか。

確かに、今回もそれなりのお金をしっかり手に入れてモミュスに行った筈なのに、コート買ったり、ボンネット買ったり、そもそも先に全部使っちゃっていましたよね。

ちなみにビチェリンとは ホットチョコレートにコーヒーとクリームを泡立てたものだそうです。せんだって、念願叶ってトリノへ行くことができましたが、悲しいことに、カフェ・ビチェリンは定休日でした。

【確認したくなったら…】

【まずはヴォーカルスコアから】

プッチーニ: オペラ「ボエーム」/リコルディ社/ピアノ・ヴォーカル・スコア

【対訳はご入用ですか?】

言葉を話せてもけっこうめんどいのがオペラの歌詞。韻文の美しさをどのように訳されているのかを楽しむこともできます。

【Boheme:Vol.1】はじまりは、4月8日

さて、ボエームの原作についてちょっとお話しておきましょう。

アンリ・ミュルジェール作、『ボヘミアン生活の情景(Scenes de la Vie de Boheme)』が原作です。戯曲としては1849年、小説としては1851年に出版されました。ちょうど王政が廃止され、第二帝政が始まるまでのはかない第二共和制の時代に出版された本です。

そして、1822年生まれのミュルジェールの自伝的青春小説で、登場人物もみな、実在のミュルジェールの友人たちがモデルになっているようです。(ええと… 簡単な引き算です。戯曲の出版時、27歳の若者だった、ということは押さえておきましょう)

ボヘミアンたちの物語はこうはじまります。

『ある朝、—それは4月の8日のことだった—』

若い詩人
Photo by Kulik Stepan

オペラの1幕目と同様、ショナールの部屋(マルチェッロの部屋ではまだありません)へ大家が家賃を取りにくる日の朝のことでした。そして、あとから来たマルセル(マルチェロ)が『1840年の4月だ』と言われるシーンが続きます。

ということで、「1840年の4月8日」にショナールがマルチェロ、コッリーネ、ロドルフォと出会うのです。
そう、1840年が原作の舞台です。前回、オペラ「ラ・ボエーム」の舞台は1830年代初頭と書きましたよね。何故、10年も時間が戻っちゃったんでしょうか?
その事については、また別の時にでも。

ところでところで、ロドルフォの仲間は実はあとふたりほど居たようです。
詩人ロドルフ(アンリ・ミュルジェール本人)、音楽家ショナール、画家マルセル、哲学者コリーヌの他に、彫刻家ジャックとジャーナリストのカルロスという二人の仲間たち。

このうち、彫刻家ジャックは、オペラの「ロドルフォ」のもうひとりのモデルとなります。

まあ、一緒に屯していたのが、ロドルフ、ショナール、マルセル、コリーヌの4人なのですから(一緒に住んでいたのは、ショナールとマルセルです。ショナールが家賃を払えずに追い出されたあとに住んだのが、パトロンからお金をもらったマルセルなのです。)4人がどうしても中心になってしまいますよね。6人もボヘミアンたちが居たら、きっと舞台の上はめちゃくちゃ狭かったでしょうし、合唱メンバーがモミュスに入ることができるスペースはもう残らなかったかもしれません。

ショナールにだって、フェミという名前の染色職人の恋人がいたんです。振られちゃったけれど。
ジャックにも、もうひとりのミミのモデルとなったフランシーヌという恋人が居ました。「恋人」についていえば、皆さんけっこう賑やかでしたよ。別れたの戻ったの、別の恋人ができたのと大騒ぎです。

コリーヌだけは、実は賢いのか恥ずかしがりなのか、こっそりと隠していて、みんなに紹介したり、一緒に連れてきたりはしなかったようです。 賢明ですね。

あとの3人はいずれも破局しまくって大騒ぎしまくっていましたから、さすが、哲学者、よくわかって………… いたんでしょうか??

革命

【Boheme:プロローグ】若者よ、恋なんかしてる場合じゃない!

ラ・ボエームの解説本を読むと、舞台はたいてい、1830年頃のパリ、時はクリスマス・イブと書いてあります。

革命
Photo by Pierre Herman

まあ、せいぜいが1830年代中頃まで。 つまり1830年から1835年頃と見るのがよさそうです。
お話は文無しの若者たちと、貧しいけれど心根の優しい娘たちの一瞬のきらめくような愛と死を描いたとてもロマンチックなお話ですけれど、この当時のフランスって、実のところ、とんでもないことになっているんです。
ここんところは押さえておきましょうか。

1789年、フランス革命ですべてがガラガラポン!王政が廃止され共和制へ。高い理想を持って突っ走りすぎたせいで内部では自己崩壊してしまいます。

ところがあまりに過激な革命の進み方にびびった諸外国から、介入にあってしまいます。現在もどこかの国がなんかあると介入しますよね。さすがにこれには困った。
それを打ち破れるには強い軍人が必要だったのです。いいところに出てきたのがナポレオン。その帝政の時代を経て、やっぱり成り上がりは「ダメ」と王政復古がなされます(忙しいですね)。

ルイ16世の弟のルイ18世の時はまあなんとかいったんですが、その弟、シャルル10世のとった反動政策に叛旗を翻したのは力をつけてきたブルジョワジ(中産階級)たち。

7月革命で国王を追い出し、オルレアン家のルイ・フィリップによる新国王が誕生します。
おお、そういえば、ルイ・フィリップさんって、1幕でショナールが投げたコインに刻印された国王陛下でしたよね。

その結果、爵位が裕福な市民階級に買われて「成り上がり貴族」が誕生する一方で一般大衆の多くは職を失い、町は失業者で溢れていました。

一方、レ・ミゼラブルのクライマックスの学生たちの蜂起のシーンは1832年6月のパリ蜂起(暴動)が舞台です。
それは経済国王といわれたルイ・フィリップの下、広がる貧富の格差と不作、コレラによる街の荒廃が背景となり、やり場を失った若い理想主義者たちの暴発でした。気の毒に……
そしてその失敗により、民衆の不満は1848年の2月革命によって国王が追い出されるまでどんどん肥大し悪化していったのです。
ということで、まあ、ロマンチックどころでないのがこの時代です。

ロドルフォもミミを口説いている暇なんかない状態のはずですが、良くしたものでこういう時代ならではの物語が産まれたのですね。
あとから重要になってきますからしっかり押さえておきたいポイントです。私だったらきっと試験に出しますよ。

【珍しい版を見つけました】
“PUCCINI : LA BOHEME DVD”
ルチアーノ・パヴァロッティ、イレアナ・コトルバシュという名盤の一つですがまだ手に入ります。

【Turandot:Vol.1】君の名は

Chinese Dragon
Photo by Kulik Stepan

トゥーランドットのヒーロー、テノール役には「カラフ」とキャスト表には書いてあります。 そう、観客もたいてい王子様役のこと、カラフと呼んでいますよね。
ところが! スコアにはずーーーっと「カラフ」とは書かれていません。おお??

楽譜を見ると、なんと、「王子(principe)」または「名を秘めた王子(principe ignoto)」とだけ書かれています。
そして、3幕で姫に自分から「私はカラフ、ティムールの息子」と名乗ります。その時にはじめて、楽譜上でも「カラフ(Caraf)」と書かれるようになります。
ボーカルスコアでは、298ページの2行目と3行目をご覧ください。

確かに1幕ではリューも、ティムールも、「ご主人様!」や「息子よ!」としか呼びかけていませんよね。
リューが「私だけが名前を知っています!」と叫んだとき、「奴隷が知る筈がない!!」と(とんでもない奴ですが……)カラフは叫びます。なるほど、当然ですね。だって、ほんっとにそれまではだ~~~~~れも、オーケストラも、指揮者も、名前を知らないんですから。

[ご参考までに]プッチーニ: オペラ 「トゥーランドット」全曲版スコア リコルディ社
現在お値引き中!? 値下げされたのかしら。 とてもお手頃になっております。

【Turandot:プロローグ】もじもじする大臣たち

数年前、とあるところの連絡用のメールに軽い気持ちでちょっと前に教わったばかりのTURANDOTについての小ネタを書いたのだけれど、思いのほかにこれがウケたので同じようなネタを集めて書く様になりました。

また、一部の方たちにはかなり面白いと言っていただくことがありますので、こちらに整理して残しておこうと思います。

「さて、ピンポンパンの3人の大臣は、2幕の1場の最後、いよいよ宮廷に向かうとき、どんな風に退場するのでしょうか?」
答えは「もじもじ」 (^-^;;;;   ボーカルスコア160ページ、いちばん最後の小説のト書きをご覧ください。

– Se ne vanno mogi mogi. –

彼らはもじもじしながらと立ち去った。(嘘です。悄然として立ち去ったです)

ちなみに、これは複数だからmogi mogi ですが、一人だったとしたら「もじょもじょ」ってなります。
これも棄てがたく、なんか可愛いですよね。

[ご参考までに]プッチーニ: オペラ 「トゥーランドット」全曲版スコア リコルディ社
現在お値引き中!? 値下げされたのかしら。 とてもお手頃になっております。
[映像見るなら]なんといっても名盤はこちら。エヴァ・マルトンの強靭な声の姫君と、若々しいドミンゴの賢そうな王子。
そして ゼッフィレッリらしい絢爛豪華なセットと奇を衒わないけれどもきらめく演出はメットならではのもの。